2025/10/12 21:28

【優しさが苦しさに変わる前に】
共感と同一化の違い、そして境界を保つ知恵


共感力が高い人ほど、なぜ疲れやすいのか?

誰かの話を聞いていて、気づけば自分まで苦しくなっていた。
そんな経験はありませんか?
「わかってあげたい」「寄り添いたい」
その気持ちはとても尊いものです。

でも、共感力が高い人ほど、
他人の感情を自分の中に取り込んでしまい、
気づけば心が重くなっていることがあります。

それは、共感が「同一化」にすり替わってしまった状態かもしれません。


共感と同一化の違い

  • 共感:相手の気持ちを理解し、寄り添うこと。自分の中心は保ったまま。

  • 同一化:相手の感情を自分のものとして抱え込み、境界が曖昧になること。

共感は「響き合う音」。
同一化は「相手の音に飲まれて、自分の音を失う」状態です。


たとえばこんな場面で

友人が失恋して落ち込んでいるとき、
「つらかったね」と寄り添うのは共感です。
でも、話を聞いたあともずっと胸が重くて、
自分まで悲しみに沈んでしまうようなら、
それは同一化のサインかもしれません。

また、職場で誰かが怒っているとき、
「この人は今、何かに傷ついているのかも」と感じるのは共感。
でも、「なんでこんなに怒られるんだろう」と自分を責め始めたら、
それは相手の感情を自分のものとして抱え込んでしまっている状態です。


同一化がもたらすリスク

  • 心身の疲労:他人の感情を背負い続けることで、エネルギーが枯渇する

  • 判断力の低下:自分の感情と他人の感情が混ざり、冷静な判断ができなくなる

  • 人間関係の摩耗:相手の問題を“自分の責任”と感じてしまい、過剰に介入してしまう

優しさが、いつの間にか自分を傷つけるものになってしまう。
そんなことが起きるのです。


境界を保つための3つの習慣

ここでは、誰でも日常でできるシンプルな方法を紹介します。
難しいテクニックではなく、感覚を整えるための小さな習慣です。

①自分の感情を確認する
誰かの話を聞いたあと、
「今、自分はどう感じている?」と問いかけてみましょう。
胸やお腹に手を当てて、深呼吸するだけでもOK。
自分の感情と、相手の感情を区別する第一歩です。

②境界をイメージする
人と話す前に、
「私は私。相手は相手」と心の中で唱えてみてください。
胸の前に透明な膜を張るようなイメージでも構いません。
それだけで、感情の流れに飲まれにくくなります。

③問いを変える
「どうしてこの人はこうなの?」ではなく、
「この状況を通して、何が動こうとしているの?」と問い直してみましょう。
すると、感情の渦から一歩外に出て、
観察者の視点を取り戻せます。


夜のリセット習慣(ナイトワーク)
寝る前に、今日関わった人たちを思い出してみましょう。

そして心の中で、
「あなたの感情はあなたのもの。私は私の中心に戻ります」と唱えてみてください。

丹田(おへその少し下)に意識を置いて、
静かに呼吸するだけでもOKです。
これを続けると、他者の痛みに触れても揺らがない静けさが育ちます。


境界を持つことは冷たさではない
「距離を取るなんて、冷たい人みたいで嫌だ」
そう感じる人もいるかもしれません。

でも、境界を持つことは、相手を突き放すことではありません。
むしろ、自分を守ることで、相手に対しても誠実でいられるのです。
誰かが苦しんでいるとき、
自分まで沈んでしまったら、相手を支える力を失ってしまいます。
だからこそ、自分の中心に戻ることが大切なのです。


最後に:優しさと境界は両立できる

共感は人との絆を深める力。
でも、同一化はその絆を重荷に変えてしまう。

だからこそ、「共感しながら距離を保つ」力が必要です。
それは冷たさではなく、自分を守りながら、相手に本当の意味で寄り添うための知恵。

あなたの優しさが、あなた自身を傷つけないように。
そのための境界は、愛の一部なのです。

そして何より──この道の主役は、あなた自身です。
あなたのペースで、あなたの感性で、選び取ってください。
その選択こそが、すでに変容の始まりです。

シン